ニキビやおできなどの皮膚疾患では、ドラッグストアなどで気軽に購入できる市販薬を使って治療をすることがあります。同様に、皮膚疾患である粉瘤についても市販薬は使えるのでしょうか。結論からいえば、粉瘤はできものなので市販薬は効果がありません。
それでは、処方薬と市販薬の違い、なぜ粉瘤に市販薬は使えないのか、病院で粉瘤治療をしたいときの方法についてご紹介します。
処方薬と市販薬の違い
そもそも市販薬とはどのような薬なのでしょうか。薬の分類には大きく分けて「処方薬」と「市販薬」があります。それぞれについて違いを確認していきましょう。
処方薬
正式には「処方せん医薬品」、「医療用医薬品」と呼ばれており、処方せんを使って入手できる薬のことです。処方せんは医師により交付されるため、病院を受診して診察を受けなければ手に入れることはできません。
診察では、患者の既往歴やアレルギー歴・体質・年齢・症状・治療方針などを考慮した上で一人ひとりの治療に必要な薬の種類や量をオーダーメイドで医師が決定しています。
そのため、患者本人で量や種類を決めることはできませんが、きめ細やかな治療が可能です。
市販薬
正式には「一般用医薬品」、「OTC医薬品」と呼ばれており、処方せんがなくても薬店・ドラッグストアなどで入手できる薬のことです。
いろいろな体質や年齢の人が利用するため安全性を重視しており、基本的には医療用医薬品よりも有効成分の含有量が少なく作用も穏やかで副作用が出にくい薬です。
例外として、「スイッチOTC」と呼ばれる処方薬と同じ有効成分量が含まれている薬もあります。
薬の種類によっては、飲み合わせの相性が悪いこともあるため、現在なんらかの薬を服用しているときには、購入前に必ず薬剤師や登録販売者まで相談するようにしましょう。
なぜ粉瘤に市販薬は使えないのか
粉瘤に市販薬を使ってみたいと考えたときには、どのようなことを想像しますか。
たとえば、「感染が不安だから抗生物質を使ってみたい」、「患部が腫れているからステロイドを使ってみたい」、「たまった膿を出したい」など、困っている症状に対して市販薬を使ってみたいと考えるのではないでしょうか。
しかし、粉瘤はできものであるため市販薬を使えないのです。その理由について、それぞれについて詳しくご紹介しましょう。
粉瘤に抗生物質を使ってみたいとき
粉瘤自体は菌によって起こっている病気ではないので、抗生物質(抗菌薬)は効果がなく、できものがなくなることはありません。
過去に病院でもらった抗生物質が手元に残っていたとしても、使わないようにしましょう。
粉瘤が化膿してしまったときには抗生物質による治療が必要ですが、その場合は症状が悪化しつつあるため、病院を受診して医師の診察を受けた方がよいでしょう。
粉瘤にステロイドを使ってみたいとき
ステロイドは抗炎症作用、血管収縮作用、免疫抑制作用などいろいろな働きをもつ薬です。
しかしいろいろな働きをもつことは、それだけ副作用が起こりやすい薬ともいえます。
粉瘤は、袋の中に垢や皮脂などの異物がたまることで起こるできものです。
粉瘤にステロイドを使うときには、異物のある袋が炎症を起こしている時に注射をする場合がありますが、そのような場合はほとんどありません。
市販のステロイドの外用剤(塗り薬)を使っても効果は低く、むしろ化膿を悪化させる副作用のリスクが高いといえるでしょう。
粉瘤の膿を出したいとき
昔からよく使用されている「たこの吸い出し」こと「吸い出し軟膏」は、化膿性皮膚疾患、よう、めんちょうなどの腫れ物に使われている市販薬です。
有効成分である硫酸銅とサリチル酸の働きによって、膿を排出することで患部を治療しますが、この薬は粉瘤には使用できません。もし一時的にこの薬を使用して内容物を排出できたとしても、粉瘤の場合は内部に袋があるとまた膿がたまってしまうという再発リスクがあるからです。
このように、粉瘤に対して自己判断で市販薬を利用するといろいろなトラブルが起こるかもしれません。
粉瘤に気がついたときには、再発や症状悪化を防ぐためにも早い段階で病院を受診するのがよいでしょう。
病院で粉瘤治療をしたいときは
粉瘤治療をしたいときには、どのような病院を受診すればよいのでしょうか。
基本的に粉瘤治療は、メスを使った外科的な処置が必要になります。そのため、「外科的な処置ができる皮膚科」を受診するようにしましょう。
病院を受診する時間がなかなかとれないときには、平日の夜や土曜日などにも診療している病院があるかを探してみましょう。仕事の帰りや買い物などのついでに気軽に受診しやすくなります。
粉瘤の場合、病院の受診が面倒だと考えて何もしないでいると、症状が悪化するかもしれません。とくに「患部が大きくなってきている」、「痛みが出てきた」、「膿のようなものが出た」など気になる症状があるときには、積極的に病院を受診するようにしましょう。
まとめ
粉瘤は、市販薬を使っても効果はありません。また処方薬であっても、粉瘤ができる仕組みに合わせた治療方法でないときには、使用しても効果が低くなり副作用のリスクが高くなります。
再発や症状悪化を防ぐためには、皮膚にできた袋を手術で取り除く必要があるため、外科的な処置ができる皮膚科を受診するようにしましょう。
当院では、粉瘤の日帰り手術も行っています。自己判断で市販薬を利用して症状が悪化しないためにも、気になるできものを見つけたときにはぜひお気軽にご相談ください。
(川崎たにぐち皮膚科院長 :谷口 隆志 監修)
川崎の皮膚科なら「川崎たにぐち皮膚科」
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