ただのできものだと思っていたのに、ズキズキとした痛みが出てきて、「放置しても大丈夫?」「どうすれば治るの?」と、心配をしている方もいるのではないでしょうか。

皮膚のできものが痛むのにはいくつかの原因があり、症状によっては治療が必要な場合があります。

この記事では、皮膚のできものが痛む原因と、その種類別の特徴、そして専門医が行う治療法について詳しく解説します。痛みの原因と適切な対処方法を知って、不安を解消しましょう。

 

谷口 隆志(たにぐち たかし)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医

2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。

 

皮膚のできものの主な種類と特徴

痛みを伴うできものは多岐に渡ります。ここでは、痛みを伴う可能性のある主な皮膚のできものの種類と特徴について、解説します。

毛包炎・ニキビ(炎症性病変)

毛包炎は、毛穴の奥で毛根を包んでいる毛包という部分に炎症が起こる皮膚疾患です。主に黄色ブドウ球菌などの細菌感染が原因です。

ニキビも毛包炎の一種で、毛穴の角化異常による詰まりとアクネ菌の増殖によって炎症が起こり、痛みや赤み、膿を伴うことがあります。初期は小さな膨らみでも炎症が強くなると痛みが強くなります。

粉瘤(アテローム)

粉瘤(アテローム)は皮膚の下に袋状の構造物ができ、袋の中に本来剥がれ落ちるはずの垢(角質)や皮脂が溜まってしまう良性の腫瘍です。

通常は痛みはありませんが、細菌に感染すると炎症を起こし、赤く腫れて痛みを伴うことがあります。

進行すると皮膚が破れて、膿と共に臭いのある粥状の内容物が排出されることもあります。

いぼ

いぼは、皮膚の表面から盛り上がってできる小さなできものの俗称です。主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によるものです。

通常痛みはありませんが、足の裏や指などにでき、強い盛り上がりがあると歩行時などに圧迫されて痛むことがあります。

ウイルス性のため体の様々な部位にでき、引っ掻いたりすることで自分の中でうつることもあります。

良性腫瘍(脂肪腫など)

脂肪腫などの良性腫瘍は、皮膚の下の軟部組織に発生する比較的ゆっくりと大きくなる「できもの」です。多くの場合、痛みなどの自覚症状はありません。

しかし、腫瘍が徐々に大きくなり、周囲の神経や組織を圧迫するようになると、痛みを伴うことがあります。

特に「血管脂肪腫」や「神経鞘腫」といった種類の良性腫瘍は、痛みを伴いやすい特徴があります。

できものが痛む主な原因

皮膚のできものが痛むのには、いくつかのメカニズムが関与しています。ここでは、痛みを引き起こす代表的な原因について解説します。

炎症反応:細菌や角質詰まりによる赤み・腫れ

できものが痛む主な原因の一つは炎症反応です。毛穴からの細菌感染や、粉瘤の内容物などが体内で異物と認識されると、防御反応として炎症が起こります。

炎症が起こり痛みを感じるのは、プロスタグランジンといった発痛物質が作られ、神経を刺激するためです。

炎症が起きている部位には、赤みや腫れ・熱感といった特徴的な症状が現れ、これらが痛みを伴います。

圧迫・摩擦:衣服や動かすことで神経が刺激される

できものが物理的に大きくなると、周囲の皮膚や組織が引き伸ばされたり、下にある神経を圧迫したりすることで痛みが生じることがあります。

また、衣服が常に擦れる場所や、関節部など日常的に動きが多い場所にできものができた場合も注意が必要です。

このような物理的な刺激が繰り返されることで、皮膚が圧力を感じ、その刺激が一定の強さを超えると痛みとして認識されるようになります。

血流障害:内部で膿や血が溜まり、周囲組織を圧迫

炎症を起こした粉瘤のように、できものの内部に膿や血液などが大量に溜まると、内圧が急激に上昇し、周囲の組織を強く圧迫し激しい痛みを引き起こすことがあります。

さらに、できものの圧迫によって局所の血流が悪化すると、必要な酸素や栄養が届きにくくなり、痛みが増強してしまう可能性も考えられます。

自己免疫反応:体が過剰に反応して痛みを強く感じる

頻度はまれですが、自己免疫反応が痛みの原因となることもあります。

化膿性汗腺炎のような自己炎症性疾患や、その他の特定の疾患においては、体の免疫システムが過剰に反応し、炎症を強くしたり、痛みをより敏感に感じさせたりすることがあります。

自己炎症性疾患は、専門医による慎重な診断と、免疫系に配慮した治療が必要となる病気です。

痛みの見分け方と早期受診のサイン

医療機関を受診すべきサインは、以下のとおりです。

  • 急激な腫れ
  • 強い発赤
  • 熱を伴う
  • 急に大きくなる
  • 自然に改善しない
  • 数日~1週間程度ようすを見ても改善しない、または悪化する

特に、数日~1週間程度ようすを見ても症状が良くならないようであれば、自己判断せずに皮膚科専門医にご相談いただくことをおすすめします。

主な治療方法と特徴

痛みを伴う皮膚のできものは、種類や状態によって治療法が異なります。

抗生物質外用・内服

細菌感染が原因となっている毛包炎や炎症を起こして赤く腫れた粉瘤(炎症性粉瘤)などに対しては、抗生物質の外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)による治療が行われます。

これらの薬剤は原因となっている細菌を殺菌したり、増殖を抑えたりすることで炎症を鎮めます。

医師の診断に基づき、適切な種類の抗生物質を選択し、指示された用法・用量を守って使用することが大切です。

切開・排膿処置

炎症が強く、膿が大量に溜まって腫れや痛みが著しい炎症性粉瘤や膿瘍などに対しては、切開・排膿処置が行われる場合があります。

局所麻酔をした上で皮膚を小さく切開し、内部に溜まった膿を排出させる治療です。膿による圧力が下がることで、痛みや腫れが和らぎます。

ただし、粉瘤の場合、原因である袋状の構造物が残っていると再発する可能性があるため、根本治療にはなりません。

切除

できものの種類や状態に応じて、根本的な治療として外科的な切除が行われることがあります。

ラジオ波メスは、主に皮膚表面の比較的小さなできものに用いられます。

くりぬき法は、専用の円筒状のメスで皮膚をくり抜き、癒着の少ない粉瘤などを袋ごと取り除く方法です。

メスによる切除は、大きなものや、傷跡が残りやすい部位のできものに対し、紡錘形に皮膚を切開して摘出します。

当院の特徴

当院では、皮膚科専門医が患者さま一人ひとりのお話をていねいに伺い、できものの状態だけでなく、肌質や体質まで総合的に診察いたします。

その上で、ご希望も尊重しながら、最も適した治療法を提案いたします。

費用

痛む場合には、保険診療で治療できます。保険診療の場合にかかる費用は、以下のとおりです。

項目

費用(税込)

初診料

約900円

再診料

約200円

処方料

約200円

切開排膿処置(化膿した粉瘤の切開処置)

約1,800円

できものの手術

約10,000円〜20,000円

痛み以外の治療では、自由診療となる場合があります。費用につきましては、担当医師にご相談ください。

よくある質問

Q. 粉瘤は触ると痛いですか?

粉瘤は皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に垢や皮脂が溜まったものであり、通常、触っても痛みを感じることはほとんどありません。

しかし、袋の中に細菌が侵入して炎症を起こすと、「炎症性粉瘤」という状態になり、赤く腫れてズキズキとした痛みを伴うようになります。

Q. おできが痛いのはなぜですか?

「おでき」とは、一般的に毛穴やその周囲の皮膚組織が黄色ブドウ球菌などの細菌に感染して炎症を起こし、赤く腫れ上がった状態を指します。

毛穴の奥に膿が溜まることで内部の圧力が高まり、周囲の神経を圧迫するため、ズキズキとした痛みを伴うことが多いのです。

Q. 良性腫瘍は押すと痛いですか?

多くの良性腫瘍は、ゆっくりと大きくなるものの、押しても特に痛みを感じないことが一般的です。

しかし、腫瘍の種類や大きさ、発生した場所によっては、押すと痛みを感じることがあります。

特に「血管脂肪腫」や「神経鞘腫」といった一部の良性腫瘍は、痛みを伴いやすい性質を持っています。

皮膚のできものが痛いときには、川崎たにぐち皮膚科へ

皮膚のできものに関するお悩みに対し、皮膚科専門医が豊富な知識と経験に基づいて診断・治療をいたします。

痛みを伴うできものから、美容的な観点でのご相談まで幅広く対応しております。

川崎周辺で皮膚のできものにお困りの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。ていねいなカウンセリングと適切な治療を提供いたします。

(川崎たにぐち皮膚科院長 :谷口 隆志 監修)

 

 

参考文献

ニキビの発症メカニズム,治療,予防

日本形成外科学会|粉瘤(アテローム・表皮嚢腫)

日本形成外科学会|脂肪腫

日本整形外科学会|症状・病気をしらべる「軟部腫瘍」

炎症性疼痛ー炎症は抑えた方がいいのかー

日本ペインクリニック学会|痛みの機序と分類