ほくろにかゆみが出てきて「大丈夫かな」と、不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
ほくろのかゆみにはいくつかの原因が考えられ、中には治療が必要な症状もあります。
この記事では、皮膚科専門医がほくろがかゆくなる原因や自分でできる対処法、医療機関での適切な治療法について分かりやすく解説します。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。
ほくろがかゆい原因
ほくろがかゆい原因を、心配がいらない場合と注意が必要な場合に分けて説明します。
心配はいらないが、観察が必要な原因
まず考えられるのは「皮膚の乾燥」です。肌全体が乾燥するとほくろも乾燥し、皮膚のバリア機能が低下します。
その結果、普段は気にならないようなわずかな刺激にも敏感になり、かゆみを感じやすくなります。
また、「外部からの刺激」も原因の1つです。衣類がこすれたり、アクセサリーに接触したり、汗や合わない化粧品などが、ほくろやその周辺の皮膚を刺激したりしてかゆみを引き起こすことがあります。
さらに、ほくろの周りにアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎などの「湿疹」ができ、その影響でほくろもかゆく感じられることもあります。
注意が必要な原因
一方で、注意が必要なほくろのかゆみもあります。
代表的なものが皮膚がんの「メラノーマ(悪性黒色腫)」です。かゆみはメラノーマの症状の一つとして現れることがあります。
ただし、かゆみがあるからといって、必ずしもメラノーマであるとは限りません。
特に高齢者のメラノーマではかゆみの症状が出にくい、あるいは感じにくいというケースも報告されています。
そのため、かゆみだけでなくほくろの見た目の変化など、他の所見と合わせて総合的に判断することが重要です。気になる場合は、自己判断せずに専門医にご相談ください。
放置しても大丈夫?かゆみがあるときのセルフチェック|受診のサイン
メラノーマの特徴には、国際的な基準としても使われているABCDEルールがあります。目で見て分かる基本なので、セルフチェックしてみましょう。
1つでも該当する場合は、悪性のものか、悪性のものに変化した可能性があるので、受診をおすすめします。
【メラノーマの特徴】
ABCDEルール | 説明 |
Asymmetry | 形が非対称 (左右対称でない、いびつな形) |
Border irregularity | 境界が不鮮明・ギザギザしている(ほくろと周囲の皮膚との境界がはっきりしない) |
Color variegation | 色が均一でない(濃淡があったり、複数の色が混じっている) |
Diameter>6 mm | 直径が6mm以上 |
Evolution | 形や大きさ、色、高さなど症状に変化がある |
少しでも気になる変化があれば、早めに専門医にご相談ください。
自宅でできる対処法
かゆみのあるほくろには、自宅で以下のように対処することがおすすめです。
- かかないようにする
ほくろにかゆみを感じたときは、自宅での適切なセルフケアが効果的です。まず、かゆみを感じてもできる限りかかないようにしましょう。
爪や指先でかくと、皮膚が傷ついて炎症が悪化したり細菌感染を引き起こしたりする危険があります。ほくろの輪郭や色ムラが不明瞭になってしまうと、後の皮膚科での診断が難しくなることもあるため、注意が必要です。
- 冷たいタオルで冷やす
次に、冷たいタオルでやさしく冷やす方法を試してみてください。
清潔なタオルを氷水で冷やし、かゆみが気になる部分に軽く当てることでかゆみが和らぐことがあります。
- 刺激を避ける
また、日常的に化学繊維の衣類や刺激の強い洗剤を避けることも重要です。
綿洗剤やスキンケア製品は「無香料・低刺激」のものを使用すると、ほくろ周囲の肌への刺激を最小限に抑えられます。
- 保湿する
肌の乾燥がかゆみを引き起こす場合は、保湿ケアでバリア機能を高めましょう。入浴後は特に皮膚が乾燥しやすいため、早めに保湿クリームやローションを塗って保湿してください。自分の肌質に合った保湿剤を選ぶことが、トラブル予防の鍵となります。
これらのセルフケアを継続してもかゆみが改善しない場合や、ほくろの色や形に変化を感じたときは、すぐに専門医(皮膚科)を受診することをおすすめします。
主なほくろの除去方法
医療機関でのほくろ除去には、主に以下のような方法があります。
【医療機関でのほくろ除去】
種類 | 除去方法 | 向いているほくろ |
ラジオ波メス |
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くり抜き法 |
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メスによる切除縫縮 |
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どの方法が適しているかは、ほくろの種類、大きさ、深さ、部位、そして患者様のご希望などを考慮して、医師が総合的に判断いたします。
ほくろの除去方法について、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
当院の特徴
当院では、皮膚科専門医がていねいに診察し、ほくろの状態はもちろん、肌状況や体質を見極め、ご希望(例えば、できるだけ傷跡を残したくない、ダウンタイムを短くしたいなど)もお伺いした上で、最適な施術を提案いたします。
施術後のアフターフォローにも力を入れておりますので、ご安心ください。
クリニックでの診察&治療の流れ
クリニックでの診察と治療の流れは、以下のとおりです。
- 問診表記入
- 診察・カウンセリング
- 施術
- 術後処置の説明
- 抜糸・傷の診察
受付にて問診票をお渡ししますので、現在の症状やこれまでの経過、アレルギーの有無などをご記入ください。医師がほくろの状態を詳しく診察し、結果に基づき、適切な治療法や期待できる効果、考えられるリスクや副作用、費用などについて丁寧にご説明いたします。
治療内容にご納得いただけましたら、同意書にご署名いただいた上で施術をします。当院では局所麻酔を使用しますので、施術中の痛みはほとんどありません。
施術後にはお薬の塗り方や、ご自宅でのケア方法、日常生活での注意点などを詳しくご説明いたします。切除縫縮法など縫合をした場合は、後日、抜糸のためにご来院いただき、経過を確認するための診察もします。
診療(診察のみ)をご希望の場合、ご予約は不要です。WEB受付または直接ご来院いただき、窓口で受付番号をお取りください。当日の順番にて診療いたします。施術をご希望の場合は、WEB受付にて1か月前からご予約が可能です。
費用
ラジオ波メスの場合、ほくろのサイズごとで料金が異なります。当院でほくろ除去に必要な費用は、以下のとおりです。
除去方法 | 診療 | 費用(税込) | ||
ラジオ波メス | 自由診療 | 3mmまで | 10,780円 | |
6mmまで | 16,280円 | |||
10mmまで | 21,780円 | |||
くり抜き法・メスによる切除 | 保険診療(3割負担) | 約10,000円~20,000円 |
自己負担額が気になるときには、いつでも担当医にご相談ください
よくある質問
Q. ガンになるほくろの見分け方は?
基本的に、ほくろははっきりしています。形が比較的整っており(円形や楕円形など)、周囲の皮膚との境界がはっきりしていて、色も均一なことが多いです。
一方、皮膚がん(メラノーマ)の可能性があるほくろは、形がいびつで左右非対称だったり、輪郭がぼやけていたり、色が均一でなく濃淡があったり、急に大きくなったりという、ABCDEルールにある特徴が見られることがあります。ご自身での判断は難しいため、少しでも気になる場合は早めに皮膚科専門医にご相談ください。
Q. ほくろが痒い場合は保険適用になりますか?
ほくろのかゆみで受診されても、必ずしも保険適用になるとは限りません。医師が診察し、かゆみの原因が悪性の疑いがある、あるいは強い炎症を伴っているなど、医学的に治療が必要な状態(例えば、病理検査や切除手術が必要と判断される場合)と診断されれば、その治療に対して健康保険が適用される可能性があります。
美容目的でのほくろ除去や、特に治療の必要がないと判断された場合は、自費診療となります。
ほくろのかゆみでお悩みの方は、川崎たにぐち皮膚科へ
ほくろのかゆみは、ご自身では判断が難しい場合も少なくありません。心配ないケースもあれば、注意が必要な皮膚疾患のサインの可能性もあります。かいて症状を悪化させる前に一度、皮膚科専門医にご相談いただくのがおすすめです。
当院では、皮膚科専門医が丁寧に診察し、症状に最適なアドバイスと治療を提供いたします。ほくろのかゆみや見た目の変化でお悩みでしたら、どうぞお気軽に川崎たにぐち皮膚科までご相談ください。
副作用・リスク
ラジオ波メス
ラジオ波メスの副作用やリスクは、以下のとおりです。
- 赤み
- かゆみ
- 色素沈着
- 腫れ
- 熱傷
- 熱感
- 瘢痕形成など
- かさぶたができても、自分では取らないでください。
くりぬき法・メスによる切除
くりぬき法やメスによる切除の副作用やリスクは、以下のとおりです。
- 出血
- 感染
- 再発
- 局所麻酔薬のアレルギー反応など
- その他にも、体調の変化があった場合には医師に相談してください。
ラジオ波メス
- 保護テープの上からであれば、施術当日からメイクや洗顔が可能です。
- 傷口が完全に塞がるまでは、塗り薬の塗布と保護テープの使用を続けてください。
- 施術してから2週間後には、再診で患部の状態を確認します。
- 施術から2週間以上過ぎた頃には、患部が桃色へと変化します。これは傷が修復する過程における正常な反応です。
- 桃色の肌状態は日焼けしやすいため、患部には小まめに日焼け止めを塗りましょう。
- 肌が桃色になってからは3~6か月の時間をかけて、もとの色へと戻っていきます。
- 外科的切除に比べて再発のリスクがあります。
参考文献
Halo dermatitis followed by the development of vitiligo associated with Sutton’s nevi
The pathophysiology and staging of cutaneous malignant melanoma