「このほくろ、前より大きくなってない?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

放っておいて大丈夫なのか、それとも受診したほうがいいのか、判断に迷う方は少なくありません。ほくろの多くは良性で心配のないものですが、中には注意が必要なケースもあります。

特に、短期間で大きくなったり、形や色が変わったりするほくろは、皮膚がんの初期症状と似ていることもあるため、早めの確認が大切です。

この記事では、ほくろが大きくなる主な原因や、受診を検討すべきサイン、そして当院で行っている治療法について、皮膚科専門医がわかりやすく解説します。

不安を感じたときに「まず知っておきたいポイント」をまとめているので、大きくなるほくろが気になっている方は最後までご覧ください。

谷口 隆志(たにぐち たかし)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医

2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。

 

ほくろが大きくなる原因とは?

ほくろ(母斑細胞母斑)が大きくなる一般的な原因として、紫外線の影響、衣類などによる継続的な摩擦や刺激、あるいは加齢や体質によるものなどが考えられます。これらは生理的な変化の一部であることが多いです。

  • 紫外線の影響
    紫外線を浴びると、肌は内部の細胞を守ろうとして、黒っぽいメラニン色素を作り出します。
    でも、紫外線を浴びすぎると、このメラニンの量が増えすぎて、メラノサイトという色素を作る細胞が活発になりすぎてしまいます。

    本来なら、メラニンは肌のターンオーバーで自然に外に出ていくものですが、作られすぎると排出が追いつかず、肌に残ってしまいます。その結果、ほくろが大きくなる原因になることもあります。

  • 衣類などによる継続的な摩擦
    下着や服の締め付けや圧迫は、肌にとって意外と大きな負担になります。とくに、太ももやワキのようにやわらかい部分は刺激を受けやすく、こうした負担が重なるとメラニン色素が作られやすくなってしまいます。

    さらに、圧迫によって血の巡りが悪くなると、肌のターンオーバーも鈍くなり、メラニンがうまく排出されにくくなることもあります。

  • 加齢や体質
    年齢を重ねると、肌のターンオーバー(生まれ変わり)のリズムがゆっくりになるため、メラニン色素が肌に残りやすくなります。さらに、ホルモンバランスの変化が崩れやすくなり、肌の新陳代謝が低下してメラニン色素の排出も滞りやすくなります。

ほとんどのほくろは良性であり、心配する必要はありません。

ただし、まれに皮膚がんなどの病的な理由で大きくなるケースもあるため、ほくろの色や形がどのような変化なのかを見極めることが重要になります。

受診を検討すべきチェックポイント

大きくなるほくろが危険なものではないかを見分ける国際的な基準としてABCDEルールというものがあります。

  • A (Asymmetry):形が左右非対称である
  • B (Border):輪郭がギザギザしている、境界が不明瞭である
  • C (Color):色が均一でなく、濃淡が混じっている
  • D (Diameter):直径が6mm以上ある
  • E (Evolving):形や色、大きさが変化する、出血・かゆみがある

ひとつでも当てはまる場合は、自身で判断せず、早めに皮膚科専門医にご相談ください。

主なチェックポイントは以下の3つです。

急に大きくなった

良性のほくろも、成長とともに少しずつ大きくなることはあります。ただ、その変化はとてもゆっくりで、何年もかけて少しずつ進むのが一般的です。

一方で、がん細胞は体のコントロールがきかなくなり、短期間でどんどん増えていくという特徴があります。もし「ここ数カ月で急に大きくなった」と感じる場合は注意が必要です。

特に、ほくろの直径が6mmを超えているときは、一度専門医に相談するのが安心です。

形や色がいびつに変化した

良性のほくろは、細胞が比較的まとまりやすく増え方も安定しているため、形が丸や楕円できれいに整っていることが多いです。

輪郭もなめらかで、くっきりしているのが特徴です。

それに対して、がん細胞は周囲の組織に染み込むように広がっていくため形がいびつになりやすく、左右非対称になったり、輪郭がギザギザだったり、境界がぼやけて見えることがあります。こうした不規則な形は、細胞がバラバラに増殖しているサインかもしれません。

出血・かゆみ・痛みがある

健康な皮膚や良性のほくろは、強くこすったりしない限り、簡単に出血したり、かゆみや痛みといった症状が出たりすることはまれです。

しかし、がん細胞は急速に増殖する過程で、正常な皮膚の構造を破壊していくことがあります。

そのため組織がもろくなって出血しやすくなったり、周囲の神経を刺激して、かゆみや痛みといった自覚症状が現れたりする場合があります。

放置するとどうなる?

ほくろが良性であった場合、医学的に必ず治療が必要なわけではありません。

しかし、目立つ場所にあって美容上のコンプレックスになったり、衣類で擦れて炎症や出血を繰り返したりするなど、生活上のデメリットが生じることがあります。

一方、もしメラノーマ(悪性黒色腫)などの皮膚がんであった場合、放置するとがん細胞が他の臓器に転移するリスクがあります。悪性の場合は早期発見・早期治療が何よりも重要です。

病院での検査・診断方法

大きくなるほくろの形がいびつだったり、色が不明瞭な場合は医師の診断を受けることが重要です。病院での検査・診断方法をご紹介します。

視診・ダーモスコピー検査

皮膚科では、まず医師が見た目でチェックするほか、「ダーモスコピー検査」という方法を使って詳しく調べることがあります。

この検査では、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使って、ほくろやシミを拡大して観察します。肌の表面だけでなく、内側のメラニンの分布や血管の様子まで確認できるのが特徴です。

そのため、良性か悪性かを見分ける精度が上がります。痛みもなく、メラノーマ(皮膚がんの一種)などの診断には欠かせない検査です。

皮膚生検

ダーモスコピー検査などで悪性の可能性が高いと判断された場合は、確定診断のために「皮膚生検(ひふせいけん)」という検査を行います。

この検査では、局所麻酔をしてから気になる部分の一部または全部をメスで切り取り、顕微鏡で詳しく調べます。麻酔を使うので、検査中に強い痛みを感じることはほとんどありません。

ほくろを取る治療法

大きくなるほくろは、たとえ良性であっても美容上気になる方も多く、除去を考えるケースもあります。当院では、ほくろの状態やご希望に合わせて、複数の治療法を提案しています。

ラジオ波メス

当院では主に3~4mm未満の、ふくらみのあるほくろの治療に使います。高周波ラジオ波を照射できる特殊なメスで、ほくろの組織を精密に削り取ります。 

熱によって組織を蒸散させると同時に止血作用があるため、メスによる切除と比べて周辺組織へのダメージや出血が少なく、傷跡が目立ちにくいのが特徴です。

くり抜き法

当院では主に1~6mmのほくろに適用する方法です。文房具のパンチのような「トレパン」という円筒形のメスを使い、ほくろを皮膚ごと円形にくり抜きます。

くり抜いた後、傷の大きさや深さに応じて、軟膏処置で自然にふさがるのを待つか、傷口を縫合します。縫合した場合は、1週間後に抜糸が必要です。

メスによる切除縫縮

体にできたほくろや、サイズの大きなほくろの除去に適した方法です。メスを用い、ほくろを含めて周囲の皮膚を葉っぱのような形(紡錘形)に切り取り、丁寧に縫い合わせます。

悪性の疑いがある場合、切除した組織を病理検査に提出し、診断を確定させることも可能です。縫合後、1週間程度で抜糸が必要です。

ほくろ除去の流れ

当院でのほくろ除去は、以下の流れで進めます。

  1. カウンセリング予約
  2. 医師による診察
  3. ダーモスコピー検査
  4. 治療法の決定
  5. 施術(局所麻酔使用)
  6. アフターケアの説明
  7. 経過観察

心配なことや疑問がある場合には、当院スタッフにお尋ねください。

たにぐち皮膚科の特徴

当院では、安心して治療を受けていただくために、以下の点を大切にしています。

  • 専門医による診断の正確性: 皮膚科専門医が、「ダーモスコープ」という特殊な拡大鏡を用い、ほくろの状態を精密に診断し、良性か悪性かの見極めを丁寧にします。
  • 傷跡への配慮と治療法の選択肢: 傷跡をできるだけきれいに仕上げることを重視しています。ラジオ波メスをはじめ複数の治療法から、ほくろの特性やご希望に合わせた最適な治療をご提案します。
  • 保険診療への対応: 医師の診察により悪性が疑われる場合や、生活に支障があると判断されたほくろの切除・検査は、保険診療の適用になります。

当院のほくろ除去について、詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

よくある質問

Q. ぷっくりしているほくろは病気ですか?

A. ほくろがふくらんで見えるのは、ほくろの細胞(母斑細胞)が皮膚の深い部分で増えているためで、病気ではなくほとんどの場合は良性です。

ただし、なかには悪性のケースもあるため注意が必要です。とくに、もともと平らだったほくろが急にふくらんできた、大きくなるのが早い、出血したりかゆみがある…といった変化があれば、一度皮膚科を受診しましょう。

Q. 危険なほくろの見分け方は?

A. 「受診を検討すべきチェックポイント」でも触れたABCDEルールが目安です。

  • A (Asymmetry):形が左右非対称である
  • B (Border):輪郭がギザギザしている
  • C (Color):色が均一でなく色ムラがある
  • D (Diameter):直径が6mm以上ある
  • E (Evolving):大きさや形、色が変化する

当てはまるほくろは、皮膚科専門医による詳しい検査をおすすめします。

大きくなるほくろがある方は、川崎たにぐち皮膚科へ


ほくろが大きくなると、「もしかして悪いものでは?」という不安も大きくなりがちです。

大切なのは自身で判断せずに専門家に見てもらうことです。

当院では、皮膚科専門医が丁寧に診察し、一人ひとりに最適な治療を提案いたします。大きくなるほくろや、気になるほくろがございましたら、どうぞお気軽に川崎たにぐち皮膚科までご相談ください。

川崎たにぐち皮膚科院長 :谷口 隆志 監修

 

参考文献

日本皮膚科学会|皮膚科Q&A「メラノーマ(ほくろのがん)」
日本形成外科学会|色素性母斑(ほくろ・母斑細胞母斑・黒子)
日本皮膚科学会ガイドライン|皮膚がん診療ガイドライン第 4 版 メラノーマ診療ガイドライン 2025