「できものができたけれど、そのまま放置して大丈夫か不安」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そのニキビのようなできものは、自然には治らない粉瘤かもしれません。粉瘤は放置すると大きくなったり、急に腫れて痛むこともあります。
この記事では、粉瘤の正しい見分け方と傷跡が小さいうちに治せる初期治療について解説します。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。
粉瘤の初期症状とは?
粉瘤の初期症状について、解説します。
粉瘤とは?
粉瘤の正式名称は、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)やアテロームです。
皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に本来なら剥がれ落ちるはずの垢(角質)や皮脂が溜まってできた良性の腫瘍です。
身体のどこにでもできますが、特に背中・うなじ・頬・耳たぶなどに好発します。原因は毛穴の詰まりや外傷などさまざまで、特定できない場合も多くあります。
粉瘤の初期によくある見た目や感触
粉瘤の初期の見た目や感触はどんなものなのでしょうか。
見た目
初期は数mm~2cm程度で、肌色や少し白いドーム状の盛り上がりとして現れます。
特徴的なのは、中心に開口部と呼ばれる小さな黒い点が見られることがある点です。これは毛穴の名残で、内容物が酸化して黒く見えます。
感触
皮膚のすぐ下で、弾力のあるしこりとして触れます。
指で押すと「消しゴムやスーパーボールのような硬さ」と表現され、皮膚と一緒に動く感覚があります。
炎症を起こしていなければ、初期段階で痛みを感じることはほとんどありません。
粉瘤と間違えやすい疾患との違い
粉瘤は、ニキビや脂肪腫、イボ、おできといった他の皮膚のできものと見た目が似ているため、しこりの硬さや位置、皮膚表面にある開口部(黒い点)の有無などが、見分けるための重要な判断材料になります。
【粉瘤と他の疾患の比較】
粉瘤 | ニキビ | 脂肪腫 | イボ | おでき | |
大きさ | 大きさは数mm〜10cm以上とさまざま | 数mm程度の大きさ | 大きさはさまざま、10cmを超えることもある | ほとんどが数mm程度で、表面はザラザラしている | 初期は小さく、炎症の悪化に伴って数cmほどに大きくなる |
開口部 | あることが多い | 黒ニキビでは毛穴の開きと黒ずみが見られる | 通常、開口部はない | 通常、開口部はない | 炎症が進行すると、膿の出口(膿点)ができることがある |
しこりの位置 | 皮膚のすぐ下(真皮)。触ると皮膚と一緒に動く弾力のある塊 | 毛穴の浅い部分。炎症が強いと硬いしこりになることがある。 | 皮膚より深い脂肪層。柔らかく、皮膚を動かしてもその場に留まる | 皮膚の表面(表皮)が盛り上がったもの | 毛穴の深い部分から皮下組織にかけて。赤く腫れて熱を持つ |
経過 | 自然治癒せず、徐々に大きくなる。炎症を起こすと腫れて痛む。 | 数日から数週間で変化・治癒する。同じ場所で繰り返すことがある。 | 通常、ゆっくりと大きくなる。自然になくなることはない。 | 自然に治ることもある。数が増えたり大きくなったりすることもある。 | 数日〜1週間ほどで急速に赤く腫れて痛み、膿が出ると治まる。 |
自己判断は禁物です。必ず医師の診察を受けましょう。
ニキビとの違い
ニキビは数週間で治まることが多いですが、粉瘤は自然には消えず袋が残り徐々に大きくなる傾向があります。
また、粉瘤の特徴である中心の黒い開口部は一般的なニキビには見られません。しこりの硬さも粉瘤の方が明確です。
脂肪腫との違い
脂肪腫は皮膚より深い脂肪層にできるため、粉瘤より柔らかく感じます。
皮膚をつまみ上げても脂肪腫は動かずその場に留まりますが、粉瘤は皮膚と癒着しているため一緒に動きます。また、脂肪腫には開口部がありません。
イボとの違い
イボはウイルス感染が原因で、しこりではなく皮膚表面がザラザラと硬く盛り上がっているのが特徴です。
おでき(癤:せつ)との違い
おできは細菌感染による急な炎症で、初期から強い痛み・赤み・熱感を伴います。
粉瘤が炎症を起こした状態と似ていますが、炎症前からしこりが存在していたかどうかが鑑別のポイントになります。
粉瘤の初期対応で知っておきたいこと
粉瘤は自然治癒せず、放置すると大きくなったり、炎症を起こしてしまう恐れがあります。
早期治療がおすすめです。
粉瘤を放置するとどうなる?
粉瘤は自然治癒せず、放置すると野球ボール大にまで大きくなることがあります。ある日突然、細菌感染を起こして急激に腫れあがり強い痛みを伴うのが炎症性粉瘤です。
さらに悪化すると皮膚が破れ、強い臭いを放つ粥状の内容物と膿が排出されることもあります。
基本的には良性腫瘍ですが、ごくまれに悪性化(がん化)したという報告もあります。
特に中高年の男性で、頭部や臀部などにできたものが「急に大きくなる」「表面が崩れてきた」といった場合は注意が必要です。
初期段階でも治療すべき理由
粉瘤は、炎症を起こしていない小さな初期段階で治療するのが最善です。
手術の傷跡が小さく済み、美容的にもきれいに治りやすくなります。また、手術時間も短く、くり抜き法のような体への負担が少ない治療法を選択できる可能性も高まります。
突然の痛みや腫れに悩まされるリスクを回避し、再発の可能性を低くするためにも、早期治療がおすすめです。
市販薬や自己処置では治らない
粉瘤の原因は皮膚の下にできた袋状の構造そのものです。袋を取り除かない限り、塗り薬や飲み薬で治せません。
無理に自分で潰そうとすると袋が破れて炎症が悪化し、重症化する危険があるため、絶対にやめましょう。
粉瘤は痛くなくても治療すべき?
痛みがなくても粉瘤は自然治癒せず、いつ炎症を起こすか分からない状態です。
見た目が気になる美容的な問題や悪臭を放つ衛生的なリスクを避けるためにも、症状がないうちの治療を検討する価値は十分にあります。
結婚式などの大切なイベント前に慌てないよう、計画的に治療しましょう。
初期粉瘤の治療法
初期粉瘤の治療法には、くり抜き法や切開法があります。
初期に選ばれる「くり抜き法」
局所麻酔後、トレパン(ディスポーザブルパンチ)という円筒状のメスで皮膚に直径2~6mm程の小さな穴を開けます。
そこから粉瘤の内容物を絞り出し、原因である袋を抜き取る手術です。傷の状態によって穴を開けたまま軟膏で治療するか、縫う場合もあります。
小さな粉瘤に適した方法で、傷跡が非常に小さく目立ちにくいのが最大のメリットです。また、切除手術に比べると施術時間は短いですが、完治までの日数は長くかかります。
他の治療法との違い(切開法など)
くり抜き法は傷が小さいですが、炎症が強い場合や癒着が激しい粉瘤には行えません。
その場合は、皮膚を切開して袋を丸ごと取り出す切開法で対応します。切開法は粉瘤の大きさなりの傷跡が残ります。
また、炎症がひどい場合は、まず切開して膿を出す処置を優先し、後日改めて袋を取り除く手術をすることもあります。
美容皮膚科で治療を受けるメリット
美容皮膚科では、傷跡を最小限に抑えるだけでなく縫合を工夫して一本の綺麗な線にするなど、傷跡の美しさにこだわった治療が期待できます。
術後の傷跡ケアとしてレーザー治療を提案できるなど、アフターフォローも充実しているので、特に顔や首など露出部の粉瘤には有力な選択肢です。
たにぐち皮膚科の粉瘤治療の特徴
当院では、皮膚科専門医が丁寧に診察し、ご希望を伺いながら最適な治療法を提案いたします。
傷跡の小さいくり抜き法から、再発リスクを抑えるための丁寧な袋の摘出を心がけた切開法まで、幅広く対応しています。
たにぐち皮膚科で行っている施術はこちらからご覧ください。
費用
粉瘤は、保険診療の対象です。以下は、3割負担の場合の目安になります。
項目 | 料金 |
---|---|
初診料 | 約900円(税込) |
再診料 | 約200円(税込) |
処方料 | 約200円(税込) |
切開排膿処置(化膿した粉瘤の切開処置) | 約1,800円(税込) |
できものの手術 | 約10,000円〜20,000円(税込) |
よくある質問
粉瘤の初期症状は?
初期症状は皮膚の下にコリコリとしたしこりが触れる程度で、見た目にはほとんど変化がない場合もあります。
痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどありません。
粉瘤は何日で大きくなる?
成長速度は個人差が大きく、数カ月から数年かけてゆっくり大きくなるのが一般的です。そのため、気づきにくい場合もあります。
ただし、一度炎症を起こすと、数日で急激に腫れて大きくなることがあります。
粉瘤の初期の大きさは?
初期は皮膚表面に盛り上がりがなく、触れて初めて気づく程度のものから、数mmのドーム状のしこりとして認識されるものまでさまざまです。
粉瘤かも?と思ったら、小さくても川崎たにぐち皮膚科へご相談ください
粉瘤は小さく、痛みのない初期段階で治療するのが、体への負担も傷跡も最小限に抑えるポイントです。
自己判断で様子を見たり、自分で潰したりするのは避けてください。
粉瘤の治療は保険適用可能です。「粉瘤かな?」と少しでも気になったら、小さなうちに、お気軽に川崎たにぐち皮膚科へご相談ください。
参考文献