腕や胸元に赤いほくろのようなものを見つけ、「これは何だろう?」と気になったことはありませんか。

普通のほくろとは色が違うため、「悪い病気のサイン…?」と不安に思われる方も少なくありません。

赤いほくろの多くは心配のない良性のものですが、中には注意が必要なケースもあります。

この記事では、皮膚科専門医が赤いほくろの正体や治療法、放置して良いかどうかの見分け方を詳しく解説します。

谷口 隆志(たにぐち たかし)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医

2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。

赤いほくろとは?

赤いほくろは年齢とともに増える方も多い傾向にあります。

ここでは、できた赤いほくろの正体や原因について解説します。

赤いほくろ=さくらんぼ血管腫(チェリースポット)のことが多い

老人性血管腫とも呼ばれますが、早い方では20代からできはじめ、年齢を重ねるにつれて誰にでもできる可能性があります。

大きさは直径1mm程度の小さな点から小豆大くらいまでさまざまで、大きいものはドーム状に盛り上がることもあります。

赤いほくろは、胸やお腹・背中・腕など、主に体の中心部分にできやすい傾向がありますが、体のどこにでも現れる可能性があります。

さくらんぼ血管腫は「血管が増えている状態」ではあるものの、がんのように細胞が制御不能に増えたり、他の場所に転移したりする悪性の腫瘍ではないため、健康上の問題はありません。そのため、治療は保険適用外(自費診療)となります。

赤いほくろができる原因

さくらんぼ血管腫(赤いほくろ)ができる正確な原因は、まだ完全には解明されていません。

ですが、いくつかの要因が関係していると考えられています。

主なものは以下の3つです。

  • 加齢
    年齢を重ねることで、血管を構成する組織に変化が起こり、赤いほくろができやすくなるといわれています。

  • 紫外線による皮膚へのダメージ
    長年浴びてきた紫外線は、皮膚や血管にダメージを与え、それが赤いほくろの発生につながる可能性があります。

  • 遺伝的要因
    家族に赤いほくろができやすい人がいる場合、同じように体質的にできやすい傾向があると考えられます。

このように、赤いほくろは「加齢・紫外線・遺伝」といった複数の要因が関係して発生すると考えられています。

赤いほくろと他の症状との違い

赤いほくろによく似た症状を示す皮膚のできものもあります。

中には注意が必要なものもあるため、自己判断は禁物です。

 

赤いほくろ

化膿性肉芽腫

クモ状血管腫

悪性黒色腫(メラノーマ)の一部(アメラノティック・メラノーマ)

状態

毛細血管が異常増殖してできた良性の腫瘍

毛細血管が異常増殖してできた腫瘍

中心の動脈が拡張し、そこから毛細血管が放射状に伸びた状態

メラニン色素を作らない悪性腫瘍(皮膚がん)

大きさ

数mm

直径約0.5~2cm

直径が針頭大から1cm程度

6mm以上になることが多く、拡大傾向が見られる

特徴

  • 鮮やかな赤色
  • 少し盛り上がっている
  • 出血しやすい
  • 中心から放射状に血管が広がる
  • ピンクや赤色
  • 形が非対称
  • 境界が不明瞭
  • 形や大きさが変化する

できやすい部位

体幹

口唇や指、顔面、乳頭など

顔面や頸部(けいぶ)、胸部、肩など

顔、首、体幹、腕や脚

鑑別は、専門医でもダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使わないと困難です。

少しでも気になる点があれば、自己判断はせず皮膚科を受診するのがおすすめです。

赤いほくろは放置して大丈夫?

赤いほくろはまれに皮膚がんの一種が赤いほくろのように見える場合もあるので、注意が必要です。

ここでは、赤いほくろは放置して大丈夫か、注意すべき赤いほくろの特徴についてお伝えします。

基本的には良性

赤いほくろの多くを占める「さくらんぼ血管腫」は良性です。そのため、医学的には治療の必要はなく、放置しても健康上の問題を引き起こすことはありません。

良性とされる理由は、さくらんぼ血管腫は「血管が増えている状態」ではあるものの、がんのように制御不能に細胞が増えるわけではないためです

悪性化することはほとんどなく、一般的に数ミリ程度の大きさで止まります。転移や急激な拡大といった進行性もないため、基本的には心配いらないと考えられています。

医学的に健康リスクをもたらすことはなく、痛みやかゆみなどの自覚症状もほとんどありません。内臓や全身の血流に影響を及ぼすこともなく、むしろ加齢に伴ってよく見られる自然な変化のひとつとして捉えられています。

注意すべき赤いほくろの特徴

ごくまれに皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)などが赤いほくろのように見えることがあります。

ご自身でチェックする際の目安として、皮膚がんの早期発見に用いられる「ABCDEルール」を紹介します。

【医療機関を受診すべきほくろの特徴】

ABCDEルール

説明

Asymmetry

左右対称でない、いびつな形

Border irregularity

ほくろと周囲の皮膚との境界がはっきりしない

Color variegation

色の濃淡があったり、複数の色が混じっている

Diameter>6mm

直径が6mm以上

Evolution

形や大きさ、色、高さなど症状に変化がある

ABCDEルールに一つでも当てはまる場合は、皮膚がんの可能性も考えられますので、できるだけ早く医療機関にご相談ください。

不安を感じたら皮膚科での診断を

最終的な判断は、医師による診察と検査でしかできません。皮膚科では、まず視診(目で見て観察)と、ダーモスコピー検査をします。

ダーモスコピーは、光を当てながら病変部を10倍以上に拡大して観察する検査で、痛みは全くなく、その場で良性か悪性かの判断が可能です。

問診と併せて、総合的に診断します。

赤いほくろは取るべき?

見た目が気になる、悪性化しないか心配といった場合には、除去するのも選択肢の一つです。

見た目が気になる場合

さくらんぼ血管腫は健康上の害はありませんが、「顔や首、デコルテなど、目立つ場所にできて気になる」「だんだん数が増えてきた」といった美容的な理由で治療を希望される方は非常に多くいます。

さくらんぼ血管腫は医学的に治療の必要がない良性の病変ですが、美容的な理由から除去を希望される方は少なくありません。

特に顔や首、デコルテなど人目に触れやすい部位にできると、メイクで隠しにくく「老けて見える」「清潔感に影響する」と感じる方もいます。

さらに年齢とともに数が増えやすいため、「これ以上増えたらどうしよう」と将来的な不安から相談されるケースも多いです。

治療にはレーザーや電気凝固法などの皮膚科的手技が用いられ、比較的短時間で安全に除去できることがほとんどです。

不安がある場合

良性と診断されても、「あるだけで不安」「悪性化しないか心配」といった場合には、心理的な負担を軽くするために除去する選択肢もあります。

良性だと診断されても、「本当に大丈夫かな?」「見ているだけでなんだか不安…」と感じる方も少なくありません。

体に害はないと分かっていても、気になる赤いほくろがあるだけで日常生活にストレスを感じてしまうことがあります。

そのため、皮膚科では「安心するために取っておく」という治療も立派な理由のひとつとされています。実際に除去すると気持ちが軽くなる方も多くいらっしゃいます。

赤いほくろの予防はできる?

さくらんぼ血管腫を完全に防ぐ確実な予防法は現在のところありません。

しかし、皮膚全体の健康を保つための日々のケアが、発生を抑制したり、肌を健やかに保ったりすることに繋がると考えられます。

生活習慣の改善

赤いほくろを防ぐために、生活習慣の見直しをしましょう。

  • 紫外線対策: 日焼け止めの使用や帽子・日傘の活用。
  • 抗酸化作用のある食事: ビタミンC、Eなどを多く含む食品(緑黄色野菜、果物など)をバランス良く摂る。
  • 物理的刺激を避ける: 衣服の摩擦などの刺激を避けるため、肌に優しい素材を選ぶ。

紫外線対策は、季節を問わずするようにしてください。体の内側からケアするとともに、必要以上に皮膚を刺激しない工夫も大切です。

定期的なセルフチェック・皮膚科健診

月に一度は、「ABCDEルールに従って、ほくろの形や色、大きさに変化がないか」「新しいほくろはできていないか」、ご自身の全身の皮膚をチェックする習慣をつけましょう。

早期発見が何よりも大切です。また、定期的に皮膚科で健診を受けることもお勧めします。

赤いほくろの治療法

当院では、ご希望やほくろの状態に合わせて、最適な治療法をご提案します。

レーザー治療(Vビーム)

赤い色素に反応するレーザーを使って、原因になっている血管だけを治療します。

特徴

Vビームは、赤い色素(血液中のヘモグロビン)に選択的に反応するレーザーです。

そのため、周りの正常な皮膚組織へのダメージを最小限に抑えながら、原因となっている血管だけをピンポイントで治療できます。

効果

レーザーの熱エネルギーによって異常に増殖した血管を破壊し、赤いほくろを消退させます。

また、レーザーが皮膚の真皮層を刺激することで、コラーゲンの生成を促し、肌のハリを改善する効果も期待できます。

おすすめな人

  • 小さなものが多発している方
  • 傷跡を極力残したくない方

ダウンタイムや副作用リスク

施術後、1~2週間程度、内出血(紫色のあざのような状態)が出ることがありますが、時間とともに自然に消えていきます。

軽い腫れやヒリヒリとした痛みを伴う場合があります。

また、一度で取りきれず、複数回の照射が必要な場合や、まれに再発の可能性があります。

もし治療した同じ場所に再び赤いほくろが現れた場合には、ご自身で判断せず、早めに医師へ相談してください。

外科的切除

メスを使って、赤いほくろを切除します。

特徴

局所麻酔の後、メスで赤いほくろを周囲の皮膚ごと切り取り、丁寧に縫い合わせる方法です。

効果

ほくろ組織を完全に取り除けます。

おすすめな人

  • 比較的サイズが大きい赤いほくろの方
  • 悪性の可能性が否定できないため病理検査(切り取った組織を顕微鏡で調べる検査)が必要な方

ダウンタイムや副作用リスク

施術後に線状の傷跡が残り、約1週間後に抜糸が必要です。ごくまれに、感染やケロイド(傷跡が盛り上がる状態)のリスクがあります。

自分で除去するのは危険

カッターで削ったり、市販の除去クリームやもぐさを使ったりして、ご自身でほくろを取ろうとすることは絶対にやめてください。

これらの方法は、皮膚に深刻なダメージを与え、ひどい傷跡や火傷の跡が残る可能性があります。

また、傷口から細菌が入り込んで感染を起こす恐れや、万が一悪性腫瘍だった場合に診断が遅れ、治療が手遅れになる危険性も伴います。ほくろの除去は、必ず医療機関で受けてください。

たにぐち皮膚科のほくろ治療の特徴

皮膚科専門医によるダーモスコピーによる正確な診断の上で、お悩みやご希望をじっくりお伺いします。

また、レーザー治療や外科的切除など、様々な選択肢の中から一人ひとりに合った治療法を提案し、一緒に最適な治療法を考えます。

効果的で肌への負担が少ない治療を提供するため、治療後の過ごし方やスキンケアについても丁寧にアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。

 

川崎たにぐち皮膚科院長 :谷口 隆志 監修

費用

自由診療の場合の費用は、以下のとおりです。

施術

費用(税込)

Vビーム:傷跡の赤み

1箇所10,780円

ラジオ波:3mmまで

10,780円

ラジオ波:6mmまで

16,280円

ラジオ波:10mmまで

21,780円

10mm以上は5mmごとに11,000円追加です。

治療が複数の場合、料金は大きさの合算で計算します。ほくろの種類によっては、保険適応となる場合があります。

よくある質問

Q. 赤いほくろは自然に消えますか?

一度できたさくらんぼ血管腫が自然に消えることは、残念ながらほとんどありません。

放置しても健康上の問題はありませんが、見た目が気になる場合には除去治療を検討してみてください。

Q. ほくろが赤いのはなぜですか?

皮膚の毛細血管が異常に増えたり、広がったりしているため、血液の色が透けて赤く見えます。

Q. 赤いほくろができやすい人は?

はっきりとした原因は不明ですが、特定体質の方のほか、紫外線を多く浴びる生活習慣のある方や、衣服などによる摩擦が多い部位にできやすい傾向があると考えられています。

赤いほくろでお悩みの方は、川崎たにぐち皮膚科へ

赤いほくろの多くは心配のないものですが、見た目の問題や、まれに潜む病気の可能性など、不安な場合には除去を検討してください。

 

自身の赤いほくろが気になる方、一度きちんと専門医に診てほしいという方は、一人で悩まず、川崎たにぐち皮膚科へお気軽にご相談ください。

専門医による丁寧な診察とカウンセリングで、対応いたします。

 

参考文献

徳島県医師会|血管腫
日本形成外科学会|異物肉芽腫
日本皮膚科学会ガイドライン|皮膚がん診療ガイドライン第 4 版 メラノーマ診療ガイドライン 2025