「もしかして、皮膚がんでは…」と、今までなかったほくろを見つけて、急に心配になってしまった方もいるのではないでしょうか。
ほくろのほとんどは心配のない良性のものです。しかし、ごくまれに悪性黒色腫(メラノーマ)という悪性度の高い皮膚がんが隠れていることがあります。
大切なのは、危険なほくろのサインを知って、早期発見・早期治療につなげることです。
この記事では、自宅でできるセルフチェックの方法から、皮膚科での専門的な検査・治療法まで、詳しく解説します。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。
ほくろと皮膚がん(悪性黒色腫)の違い
身体にできる黒や茶色のほくろには、心配のないものと、注意が必要な皮膚がんがあります。
ここでは、それぞれの特徴について解説します。
ほくろ(良性腫瘍の特徴)
一般的にほくろと呼ばれるものは、医学的には色素性母斑(しきそせいぼはん)または母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)といいます。これは、メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)に似た母斑細胞が、皮膚の一部に集まってできた良性の腫瘍です。
多くのほくろには、以下のような特徴があります。
- 形状がほぼ左右対称
- 境界が明瞭
- 色はほぼ均一
皮膚がんとは?(悪性黒色腫の特徴)
皮膚がんとは、皮膚を構成する細胞ががん化し、まとまりがなく不規則に増殖を繰り返す病気です。
皮膚がんにはいくつかの種類がありますが、ほくろと見分ける上で特に注意が必要なのが、悪性黒色腫(メラノーマ)です。
悪性黒色腫は、メラニン色素を生成するメラノサイトががん化したもので、ほくろと対照的な、以下のような見た目の特徴を持つことがあります。
- 非対称
- 境界がはっきりしない
- 色の濃淡があったり、複数の色が混じったりしている
赤いほくろと他の症状との違い
赤いほくろができて心配される方もいらっしゃいますが、その多くは老人性血管腫またはさくらんぼ血管腫(チェリースポット)と呼ばれる良性のできものです。
老人性血管腫は、皮膚の毛細血管が増殖してできたものであり、メラノサイトががん化する悪性黒色腫とは発生の原因が異なります。
ただし、急に大きくなる、出血を繰り返すなどの変化が見られる場合は、他の病気の可能性も考えられますので、一度皮膚科へご相談ください。
セルフチェックでできる「ほくろとがんの見分け方」
ほくろが心配な場合、セルフチェックしてみましょう。悪性黒色腫を見分けるための国際的な基準として「ABCDEルール」が広く知られています。
ABCDEルールで見分ける
鏡を見ながら、ほくろが以下の項目に当てはまらないか確認してみてください。
- A (Asymmetry): 形の非対称性(左右対称でない)
- B (Border): 境界の不整(ギザギザしている、にじんでいる)
- C (Color): 色の濃淡・ムラ(色が均一でなく、濃い部分と薄い部分が混在する)
- D (Diameter): 大きさが6mm以上
- E (Evolving): 形・色・大きさの変化(大きくなる、盛り上がる、出血するなど)
危険信号となる症状
ABCDEルールに加えて、日本人には特有の注意点があります。欧米人と異なり、日本人の悪性黒色腫の約40%は、足の裏・手のひら・手足の爪といった末端部に発生します。
- 色調や形が不規則で、たいらな色素斑がある
- 色素斑の一部に隆起する病変部がある
- 爪に黒い縦線が入り、だんだん幅が広くなったり、色が濃くなったりしている
- 周りのほくろと比べて一つだけ見た目が違う、仲間はずれのほくろがある
これらのサインが見られる場合は、特に注意が必要です。
当てはまる症状がある場合は、医師に相談しましょう。
皮膚がんの種類と特徴
ほくろと間違いやすい皮膚がんには、悪性黒色腫以外にもいくつか種類があります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
皮膚がんの中でも特に悪性度が高く、転移しやすいがんです。
発生頻度には人種差があり、白人に最も多く、日本人では10万人に1~2人程度とされています。はっきりとした原因は不明ですが、紫外線や皮膚への慢性的な刺激が誘因となることがあります。
基底細胞癌
皮膚がんの中では最も発生頻度が高いがんです。高齢者の顔(特にまぶたや鼻の周り)に発生することが多く、黒っぽい色でほくろのように見えることがあります。
転移することは稀ですが、放置すると周りの組織を破壊しながらゆっくりと広がっていきます。
有棘細胞癌
基底細胞癌に次いで発生頻度の高い皮膚がんです。原因ははっきりしませんが、紫外線・慢性刺激・慢性炎症・ウイルス・放射線などが関与しているとされています。
紫外線の影響でできる日光角化症という赤いシミのような病変は、有棘細胞癌の前段階と考えられています。
皮膚がんの予防方法
皮膚がんの発生を完全に防ぐことはできませんが、リスクを減らすために日頃からできる対策があります。
紫外線対策
皮膚がんの最も大きなリスクは紫外線です。日頃から紫外線対策を心がけましょう。
- 日焼け止めは、紫外線の強い時期に戸外で使うものと、そうでないものは分けて準備
- 日焼け止めは戸外に出る前に塗り、2~3時間おきに塗り直すなど正しく使う
- 帽子・日傘・UVカット機能のある衣類といったものでの防御も心掛ける
夏だけでなく、一年を通じてするようにしましょう。
定期的なセルフチェック・皮膚科健診
月に一度は、全身の皮膚をチェックする習慣をつけましょう。
背中や頭皮など、自身で見えにくい場所は、家族に協力してもらったり手鏡を使ったりして確認することが大切です。
「おかしいな」と感じるほくろやシミを見つけたら、自己判断せずに皮膚科を受診してください。
病院での検査・診断方法
皮膚科では、専門的な機器を用いて正確な診断をします。
視診・ダーモスコピー検査
皮膚科医が目で見るほか、ダーモスコピー検査を行ないます。
ダーモスコピー検査は、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使い、ほくろやシミを拡大して観察する検査です。
皮膚の表面だけでなく、内部の色素の分布や血管の状態などを詳しく見られるため、悪性か良性かの診断精度が格段に向上します。
検査に痛みは全くありません。メラノーマなどの色素性腫瘍の診断には必須の検査です。
皮膚生検
ダーモスコピー検査などで悪性の疑いが強い場合には、確定診断のために皮膚生検をします。
局所麻酔をした上で病変の一部または全体をメスで切除し、顕微鏡で詳しく調べます。麻酔しますので、検査中の痛みはほとんどありません。
皮膚がんの治療方法
早期発見で切除すれば対処可能
大切なのは、早期発見・早期治療です。皮膚がんは自身の目で見えるため、他の臓器のがんに比べて早期発見しやすいという大きな利点があります。
早期の段階で発見し、手術で完全に取り除ければ、完治を目指すことが可能です。
病院に行くべきサイン
以下のようなサインに気づいたら、なるべく早く皮膚科専門医にご相談ください。
- ABCDEルールに一つでも当てはまる
- 爪に黒い線ができた、その線が太くなった
- 足の裏や手のひらのできものが大きくなった
- 出血や痛みがある
たにぐち皮膚科のほくろ治療の特徴
経験豊富な皮膚科専門医が担当し、ダーモスコピーを用いて一つひとつのほくろを丁寧に診察します。
診察とカウンセリングの上で、ご希望も伺いながら、最適な外科手術やレーザー治療などへ対応可能です。
できるだけ傷跡が目立たなくなるよう、細心の注意を払って施術しますので、お気軽にご相談ください。
費用
ほくろの除去が自費診療(自由診療)となる場合の費用は、以下の通りです。
3mmまで | 10,780円(税込) |
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6mmまで | 16,280円(税込) |
10mmまで | 21,780円(税込) |
10mm以上は5mmごとに11,000円が追加となります。複数個を同時に治療する場合は、大きさの合計で費用を計算します。
悪性が疑われ、検査・治療が必要な場合は保険診療対象です。
よくある質問
Q. 危ないホクロの見分け方は?
A.簡易的なチェックではありますが、 ABCDEルールで確認ができます。
形が左右非対称、境界がギザギザしている、色がまだら、大きさが6mm以上、形や大きさが変化するといった「ABCDEルールに当てはまるほくろ」は注意が必要です。
ただし、詳しくはダーモスコピー検査などを行なわないと癌かどうかの判断はできません。不安な場合は、一度医師にご相談ください。
Q. ほくろができてはいけないところは?
A.ほくろは体のどこにでもできる可能性があるため、「ここにできてはいけない」という場所は特にありません。
ただし、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)については、発生しやすい場所、特に注意して欲しい場所があります。
悪性黒色腫(メラノーマ)は、日本人の場合、足の裏(約3割)、手のひら、手足の爪といった末端部にできやすい傾向があります。
これらの場所にできた新しいほくろや、変化が見られるほくろには特に注意してください。
「癌かも?」と気になるほくろがある方は、川崎たにぐち皮膚科へ
ほくろに関する不安は、一人で抱え込まずに専門家にご相談いただくことが解決への一番の近道です。
もしできたほくろが癌だった場合は早期発見・早期治療が癌を完治させるためには重要です。
そのため、気になるほくろがある場合には、自己判断で放置したり、無理に自分で取ろうとしたりせず、お気軽に当院までご相談ください。
現在の症状や不安な点をお伺いしながら、詳しく検査を行ないます。
参考文献
日本皮膚科学会ガイドライン|皮膚がん診療ガイドライン第 4 版 メラノーマ診療ガイドライン 2025