「寒暖差があると肌の赤みが悪化する」、「赤ら顔とニキビのようなポツポツがある」などの症状がある方は、酒さという皮膚疾患かもしれません。酒さの治療薬には、大きく分けて塗り薬と飲み薬があります。

 

ここでは、当院で処方している酒さ(赤ら顔)の治療薬について、塗り薬と飲み薬ごとに種類と効果、副作用、使用上の注意事項などを詳しく紹介します。

谷口 隆志(たにぐち たかし)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医

2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。

 

酒さ治療薬の種類と効果

当院では、酒さの治療薬として「塗り薬(メトロニダゾール、アゼライン酸、イベルメクチン)」と「飲み薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)」を処方しています。それぞれ、抗炎症作用や免疫抑制作用によって皮膚の炎症を抑える・酒さの原因となるニキビダニを減らす作業があるなどの効果があり、症状に合わせて処方を行っています。

ここでは当院の酒さ治療薬の種類と効果について紹介します。

 

塗り薬

メトロニダゾール(ロゼックスゲル0.75%)

効果

酒さの代表的な症状である赤いポツポツに向いた薬です。抗炎症作用と免疫抑制作用により、慢性的な皮膚の炎症を抑えます。有効成分であるメトロニダゾールは、酒さの原因の一つである毛包虫やニキビ菌の増殖を抑え、抗菌する作用があります。1)

使い方

1日2回、患部を洗浄後に適量を塗布しましょう。

 

アゼライン酸(AZAクリア)


効果

酒さの代表的な症状である赤ら顔やポツポツに向いた薬です。抗菌作用、抗炎症作用、皮脂の分泌抑制作用、角化の抑制作用などが期待できます。催奇形性の副作用がないため、妊娠中の方でもご使用いただけます。

 

使い方

1日2回、患部を洗浄後に適量を塗布しましょう。

 

イベルメクチン(イベルメクチンクリーム)


効果

抗寄生虫作用で寄生虫による炎症を抑えます。酒さの原因となるニキビダニを減らす効果のある治療薬です。定期的な使用により、吹き出物や肌トラブルの改善が期待できます。抗炎症作用も期待できるため、酒さの赤みのあるポツポツとした症状に向いています。

 

使い方

1日1回、患部を洗浄後に適量を塗布しましょう。

 

飲み薬

抗菌薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)




効果

酒さの原因と言われているニキビダニを減らす効果があります。抗炎症作用も期待できるため、酒さのポツポツとした症状に向いています。2)

 

使い方

1日1~2回、1回50~100mgを服用してください。

 

副作用

酒さの症状には個人差があり、治療を開始してからもよくなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ症状が軽快していく場合もあります。そのため、酒さの治療には根気強く取り組むことが大切です。ここでは酒さ治療の薬について、副作用や対策方法を詳しく紹介します。

 

肌の赤み

アゼライン酸でよく見られる副作用です。使用開始後には、一時的に肌の赤みが強くなるかもしれません。ほとんどの場合は1~2週間継続することで、少しずつ赤みは治まります。

 

刺激感

アゼライン酸でよく見られる症状です。またメトロニダゾールやイベルメクチンなどでも見られることがあります。刺激感が気になるときには、1日おきや1回だけ使用するなど使用頻度を減らして様子を見ましょう。ほとんどの場合は、1~2週間の継続を目安に少しずつ治まります。

 

乾燥肌

個人差はありますが、アゼライン酸やメトロニダゾールなどの使用後に肌の乾燥を感じるかもしれません。肌が乾燥していると感じる方は、保湿ケアをしてから薬を塗布するようにしましょう。

 

上記以外にも気になる副作用が出たときや、対処をしても症状が治まらないときには、医師までご相談ください。

 

注意事項について

酒さ治療の効果を実感しやすくするためには、症状が悪化しやすい要因を避けることが大切です。ここでは酒さの症状を悪化させないための注意点について紹介します。

 

日焼け止めを使う

酒さは紫外線の影響で症状が悪化すると言われています。スキンケア後に薬剤を塗布した後は、日焼け止めを使用して肌を紫外線から守りましょう。また外出時には日傘や帽子などのアイテムも使うようにしましょう。

 

飲酒を控える

アルコールには血管を拡張する作用があるため、酒さの症状が悪化しやすくなります。また治療薬によっては、アルコールと併用することで副作用が出やすくなる場合もあります。酒さ治療中は、飲酒を控えるようにしましょう。

 

低刺激の製品を選ぶ

化粧品やスキンケア製品も、肌に合わないものを使用したときには、酒さの症状が悪化しやすくなります。「敏感肌用」や「低刺激」などの表示がある製品を選び、なるべく香料や着色料などの肌にとって刺激となる成分が含まれていないものを使用するようにしましょう。

 

料金

保険診療

初診料約900円
再診料約200円
処方料約200円

自由診療(自費診療)

初診料1,100円(税込)
再診料330円(税込)

 

メトロニダゾール(ロゼックスゲル0.75%)   10g2,200円(税込)
アゼライン酸(AZAクリア) 15g1,980円(税込)
イベルメクチン(イベルメクチンクリーム) 30g3,300円(税込)

 

よくある質問

Q.酒さはどのぐらいの期間で治りますか?

A.

酒さの治療は、終了するまでの期間に個人差があります。酒さの代表的な症状はブツブツと赤ら顔です。治療期間の目安としてブツブツは数か月、赤ら顔は数か月~数年の治療期間が必要だと言われています。治療を開始してから症状が悪化する場合もありますが、多くの場合は一時的なものです。自分の判断で治療を中断せずに、必ず医師の指示を守って根気よく治療を続けましょう。

 

Q.酒さは再発しますか?

A.

酒さは遺伝的な要因や生活環境などが影響するとされており、薬だけで完全に予防することは難しい場合もあります。しかし薬による適切な治療を続けながら、悪化の原因を避けることで、症状を和らげる効果が期待できます。

 

川崎の皮膚科なら「川崎たにぐち皮膚科」

当院では酒さ(赤ら顔)の治療薬として、主に塗り薬と飲み薬で対応しています。酒さ治療では薬を使いながら、症状が悪化する要因を避けることも大切です。治療薬の主な副作用には、肌の赤み、刺激感、乾燥肌が知られています。今回紹介したような対策をしても気になる副作用が続いているときには、当院までお気軽にご相談ください。

 

【川崎たにぐち皮膚科院長 :谷口 隆志 監修】

 

副作用・注意事項等

禁忌

「メトロニダゾール」

・妊娠3か月以内の方

・過去に同じ成分でアレルギーを起こした方

・脳や脊髄の病気がある方(脳腫瘍、脊髄腫瘍を除く)

「アゼライン酸」

・過去に同じ成分でアレルギーを起こした方

「イベルメクチン」

・過去に同じ成分でアレルギーを起こした方

「ドキシサイクリン」

・過去に同じ成分でアレルギーを起こした方

・テトラサイクリン系抗生物質でアレルギーを起こした方

「ミノサイクリン」

・過去に同じ成分でアレルギーを起こした方

・テトラサイクリン系抗生物質でアレルギーを起こした方

 

副作用

メトロニダゾール:乾燥、かゆみ、赤み、刺激感など

アゼライン酸:乾燥、かゆみ、赤み、刺激感など

イベルメクチン:かゆみ、赤み、蕁麻疹など

ドキシサイクリン:食欲不振、悪心・嘔吐、かゆみ、赤み、発疹など

ミノサイクリン:食欲不振、悪心・嘔吐、めまい、頭痛、便秘など

 

注意事項

「メトロニダゾール」

・薬を使用している間は、飲酒を控えてください。

・日焼けランプの使用や、日光を必要以上に浴びることは避けましょう。

・0℃以下で保存してしまうと、凍結するため止めてください。直射日光を避けて、室温で保管してください。

「アゼライン酸」

・通常は顔全体に塗布しますが、刺激感を強く感じる場合には、気になる部分にだけ塗布しましょう。

・目の周り、傷や腫れ、湿疹やかぶれなどがある部分には塗らないでください。

・紫外線の影響で肌にダメージが与えられると、刺激感を強く感じやすくなります。紫外線から肌を守るために、日焼け止め対策をしましょう。

「イベルメクチン」

・刺激感の少ない製品ですが、刺激感が気になるときには、1日おきや1回だけ使用するなど使用頻度を減らして様子を見ましょう。ほとんどの場合は、1~2週間の継続を目安に少しずつ治まります。

「ドキシサイクリン、ミノサイクリン」

・併用に注意すべき薬があります。現在服用中の薬がある方は、医師までご相談ください。

・食道に薬がとどまることで、食道潰瘍のリスクがあります。コップ一杯(180~200mL)の水で服用してください。

 

「アゼライン酸について」

・未承認医薬品等
アゼライン酸は、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
・入手経路等
アゼライン酸は国内の医薬品卸業者より購入しています。個人輸入された医薬品等の使用によるリスクに関する情報は下記
URLをご確認ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/index.htm
・国内の承認医薬品の有無
国内で同程度の効能・効果で承認されている国内承認医薬品薬剤はありません。
・諸外国における安全性などに係る情報
アゼライン酸は米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。|
・医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

「イベルメクチンクリームについて」

・未承認医薬品等:イベルメクチンクリームは未承認医療機器です。
・入手経路等:インドのアジャンタファーマ社で製造されたものを医師が個人輸入しております。
・国内の承認機器の有無:同程度の成分または性能を有する国内承認医療機器等はありません。
・諸外国における安全等に係る情報:米国FDAなど諸外国の承認を受けています。
・医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

「ミノサイクリンについて」

・未承認医薬品等
ミノサイクリンは、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
・入手経路等
当院では医師の判断の下、調合しています。
・国内の承認医薬品の有無
酒さの治療薬としてメトロニダゾール(ロゼックスゲル)が国内承認されています。
・諸外国における安全性などに係る情報
ミノサイクリンは、米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。

 

参考文献

 

1)https://www.maruho.co.jp/medical/pdf/products/rozex/rozex_te.pdf

2)https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6152004F1074_3_04/

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300119_6152005F1095_1_09