「赤ら顔を改善したい」「イソトレチノインは赤ら顔に効くの?」というお悩みはありませんか?
イソトレチノインは、欧米で重症ニキビの治療薬として古くから知られています。
今回は、イソトレチノインが赤ら顔に効く理由や効果が出る時期の目安、他の薬との違い、副作用やリスクなどをご説明します。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
2007年に東京大学を卒業後、東京大学医学部附属病院を中心に総合病院やクリニックで一般皮膚科、小児皮膚科、皮膚外科手術、アレルギー、美容皮膚科領域の診療を行ってきました。その経験・知識を活かし、幅広い医療機器を備えて、様々な皮膚のトラブルの助けになれるよう取り組んで参ります。
イソトレチノインが赤ら顔(酒さ)に効く理由
酒さは症状によって、紅斑血管拡張型酒さ、丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)酒さ*、瘤腫型(りゅうしゅがた)酒さ・鼻瘤、眼型酒さの4つの型にわけられ 、とくに丘疹膿疱型酒さに効果的という報告があります 1)2)。
イソトレチノインが赤ら顔に効く理由として、毛穴の近くにある小さな油を作り出す部分毛包脂腺(もうほうしせん)への作用と肌の炎症を引き起こす物質(TLR2)の量を減らす働きが影響していると考えられています 3)。
赤ら顔の原因となる炎症反応は、TLR2の増加によって起こる皮膚表面の変化により起こると考えられていますが、イソトレチノインがTLR2を減少させることで赤ら顔が改善されると考えられます。4)
丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)酒さ*:酒さは、顔面における慢性炎症疾患。丘疹膿疱型はニキビや膿を生じる 5)。
イソトレチノインとは
イソトレチノインはビタミンA誘導体の内服薬で、過去数十年にわたり、中度から重度のにきび治療に使用されています。皮脂分泌の抑制、角化異常の正常化、抗炎症作用があり、重症患者さまでも、週1回の低用量イソトレチノインを使用することで効果的に治療できると報告されています 6)7)8)。
ただし日本では未承認医薬品のため、患者さんの個人輸入は禁止されています 9)10)。
イソトレチノインは重度のニキビや赤ら顔などに効果が期待できますが、副作用やリスクを理解した上で使用しましょう。必ず医師に相談の上、指示に従って服用してください。
イソトレチノインの肌への効果は?
イソトレチノインには、主に以下のような働きがあります。7)
皮脂分泌の抑制
皮脂腺を縮小させ、皮脂分泌を抑えるはたらきがあります。
過剰な皮脂分泌を抑制することで、アクネ菌の増殖を予防し、ニキビが作られにくくなる肌環境に整えます。
角化異常の正常化
角化異常になると皮膚が硬くなり、毛穴が閉じやすく、皮脂が溜まりやすくなります。
イソトレチノインの服用により、角化異常を正常にし、毛穴のつまりを防ぐ効果が期待できます。
抗炎症作用
アクネ菌が増殖すると、肌に炎症が生じます。
イソトレチノインの服用により、赤ら顔や肌の炎症を抑える効果が期待できます。
イソトレチノインはいつ頃から効果が出る?
イソトレチノインの効果が出るタイミングは、服用量や症状によって個人差があります。
早い人では1ヵ月程度、低用量では2~4ヵ月程度で改善がみられたという報告があります 11)。
赤ら顔治療の注意点
イソトレチノインは重い副作用(催奇形性、うつ病など)があるため、用法用量を守ることが大切です 7)。
またイソトレチノインで効果が期待できる赤ら顔は、「丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)酒さ」で、それ以外のタイプでは他の薬を併用する場合があります2)。
イソトレチノインを服用する場合は、副作用やリスクをよく理解した上で始めることが大切です。気になることがある場合には、医師へ相談しましょう。
赤ら顔治療に効果的な他の薬との違い
米国食品医薬品局(FDA)が承認した酒さの治療薬として、主に以下のようなものがあります 12)。
メトロニダゾール(ロゼックスゲル)
外用メトロニダゾール製剤は、欧米など6ヵ国を含めた70ヵ国以上で酒さや酒さに伴う炎症性皮疹などを効能効果として承認されています。
また酒さの治療ガイドラインのある米国・ドイツでは、推奨度の高い標準的治療として位置づけられています 13)。
日本では酒さに対して2022年から保険適用となり、日本人を対象とした二重盲検試験では酒さの炎症性皮脂疹に対する効果が確認されています 14)15)。
イベルメクチン
中等度から重度の丘疹膿疱性酒さの治療では、イベルメクチン1%クリームの1日1回塗布が有効とされています。
また、1日1回のイベルメクチン1%クリームの使用は、1日2回のメトロニダゾール0.75%クリームの使用よりも効果が優れているという報告があります。
アゼライン酸
アゼライン酸は、小麦やライ麦などの穀類に含まれる飽和ジカルボン酸です。
アゼライン酸20%、または15%配合した外用薬は、欧米やアジアなどで医薬品として承認されています。
とくに海外では酒さに広く使用され、FDAは15%製剤を酒さに対して承認していますが、日本ではアゼライン酸外用薬は酒さに対して臨床試験がされていないため、保険適用外です14)。
費用
酒さの治療は、自由診療(自費)です。
イソトレチノイン
イソトレチノイン 20mg 30カプセル | 16,280円(税込) |
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イベルメクチン
イベルメクチンクリーム30g 3,300円 | 3,300円(税込) |
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アゼライン酸
アゼライン酸(AZAクリア)15g | 1,980円(税込) |
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赤ら顔でお悩みの方は、川崎たにぐち皮膚科へ
イソトレチノインには皮脂腺を退縮させて毛穴を小さくする、肌のターンオーバーを促進して肌のごわつきを改善する、炎症を抑えるなどの作用があります。
特に丘疹・膿疱型(きゅうしんのうほうがた)の赤ら顔に効果的とされています。
赤ら顔にお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。
赤ら顔治療薬の副作用
イソトレチノイン 16):
胎児奇形、流産、早産、皮膚や鼻の乾燥、うつ病、肝機能障害 など
イベルメクチン 18):
ヒリヒリ感、かゆみ、乾燥 など
アゼライン酸 19):
塗布直後の赤み、かゆみ、刺激感 など
リスク・注意点
●禁忌
イソトレチノイン
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある方
- 授乳中の方
- うつ病などの精神疾患がある方
- ビタミンA過剰症の方
- 成長期の方
- 血液検査で異常があった方
- 肝機能障害のある方
イベルメクチンクリーム 20)
- 妊娠中、授乳中の方
- 体重15kg未満の小児
●イソトレチノインの注意点
- イソトレチノインには重篤な副作用として、催奇形性があります。妊娠の可能性がある方、妊娠中の方には処方できません。
- 個人輸入は避け、自己判断で服用を中止しないでください。
- 保湿剤や点眼薬を使用することで、乾燥症の軽減につながることがあります 16)。
- 服用期間中は紫外線の影響を受けやすいため、十分な紫外線対策をしてください 21)。
- 皮膚の炎症や瘢痕を予防するため、治療中や治療後6ヵ月間はレーザー治療などを避けてください 21)。
<イソトレチノインについて>
・未承認医薬品等
イソトレチノインは、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
・入手経路等
Cipla社から個人輸入しています。
個人輸入された医薬品等の使用リスクに関する情報はこちらのページをご確認ください。
イソトレチノインの個人輸入についての厚生労働省の注意喚起はこちらのページをご確認ください。
・国内の承認機器の有無
国内で同程度の効能・効果で承認されている国内承認医薬品薬剤はありません。
・諸外国における安全性等に係る情報
米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。
胎児の催奇形性、鬱、精神病などの精神疾患の副作用も報告されています。
・医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
【参考】
(1)山﨑 研志.酒皶 overview;治療・ガイドラインの変遷と病態理解のup-to-date.The 酒皶 reloaded.酒皶・赤ら顔の治療-私はこうしている.Visual Dermatology.秀潤社.2023.22(5).428-432.
(2)Emilie Sbidian, et al.A Randomized-Controlled Trial of Oral Low-Dose Isotretinoin for Difficult-To-Treat Papulopustular Rosacea.J Invest Dermatol. 2016.136(6).1124-1129.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26854486/
(3)Esther J van Zuuren,at al.Low-Dose Isotretinoin: An Option for Difficult-to-Treat Papulopustular Rosacea.J Invest Dermatol. 2016.136(6).1081-1083.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27212646/
(4)山﨑 研志.酒皶.Bella Pelle.メディカルレビュー社.5(4).14-17.2020
(5)M. Schaller,et al.Recommendations for rosacea diagnosis, classification and management: update from the global ROSacea COnsensus 2019 panel.British Journal of Dermatology.2020.182(5).1269-1276.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bjd.18420
(6)Tyng Hwey Tan,et al.Efficacy and relapse rates of different Isotretinoin dosages in treating acne vulgaris: systemic review.Clin Med (Lond).2016.16(3)Suppl 3.s34
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27252338/
(7)小林 美和.赤ら顔を呈す主な皮膚病 重症痤瘡、痤瘡に伴う赤ら顔治療.美容皮膚医学BEAUTY 赤ら顔の治療戦略を考える.医学出版.2024.7(2).19-25
(8)Ahmad Assiri,et al.Efficacy of Low-Dose Isotretinoin in the Treatment of Rosacea: A Systematic Review and Meta-Analysis.2024 .16(3).e57085
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11052926/
(9)厚生労働省 医薬品等を海外から購入しようとされる方へhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
(10)厚生労働省.アキュテイン(ACCUTANE)(わが国で未承認の難治性ニキビ治療薬)に関する注意喚起についてhttps://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1b.html
(11)Steven Brandon Nickle,eta al.Updated Physician’s Guide to the Off-label Uses of Oral Isotretinoin.J Clin Aesthet Dermatol.2014 .7(4).22–34.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3990537/
(12)Anuj Sharma MD,et al.Rosacea management: A comprehensive review.2022.21(5). 1895-1904
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.14816
(13)厚生労働省 未承認薬・適応外薬の要望に対する企業見解
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000147616.pdf
(14)山崎 研志.赤ら顔を呈す主な皮膚病 酒皶・ステロイド酒皶および口囲皮膚炎・酒皶様皮膚炎のアプローチ.美容皮膚医学BEAUTY 赤ら顔の治療戦略を考える.医学出版.2024.7(2).13-18
(15)Yoshiki Miyachi,et al.Metronidazole gel (0.75%) in Japanese patients with rosacea: A randomized, vehicle-controlled, phase 3 study.2022.49(3).330-340
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1346-8138.16254
(16)Noah Scheinfeld,et al.Facial edema induced by isotretinoin use: a case and a review of the side effects of isotretinoin.J Drugs Dermatol.2006.5(5).467-468.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16703787/
(17)ロゼックスゲル0.75% 添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/730155_2699713Q1026_2_05
(18)G Gupta,et al.Ivermectin 1% cream for rosacea.Skin Therapy Lett. 2015.20(4).9-11.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26382711/
(19)角田 加奈子.酒皶の治療:アゼライン酸外用薬.The 酒皶 reloaded.酒皶・赤ら顔の治療-私はこうしている.Visual Dermatology.秀潤社.2023.22(5).447-449.
(20)Anna Banerji,et al.Scabies.Paediatr Child Health. 2015.20(7).395–398
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4614097/
(21)イソトレチノイン
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK525949/